保証人・連帯保証人の役割

お部屋を借りる際の保証人と連帯保証人とは

お部屋を借りる際の賃貸借契約には保証人が必要になるケースが大半で、このときの保証人とは「連帯保証人」であることがほとんどです。

そもそも保証人とは、「主たる債務者がその債務を履行しない場合に、その履行をなす責任を負う者」と民法446条に規定されています。つまり、お金を借りた人(主たる債務者)がお金を返済できない(返済しない)場合に、代わってお金を返済しなければなりません。
では「保証人」と「連帯保証人」では何が違うのでしょうか?
本記事では、お部屋を借りる際の保証人と連帯保証人の違いをご説明します。

保証人だけに与えられる3つの権利

保証人と連帯保証人とは

まず、保証人は「主たる債務者が債務を履行しない場合に代わって返済する責任」を負いますが、「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」「分別の利益」という3つの権利も与えられています。

権利①「催告の抗弁権」

「催告の抗弁権」とは、債権者(お金を貸した人)が「あなた、保証人なんだからお金返してください。」と来た場合に「先に、主たる債務者(借りた本人)に請求してください。」と言い返すことができる権利です。
ただし、主たる債務者が破産手続き開始決定を受けているとき、もしくは行方不明で催告ができないときは権利を行使できません。
この権利を行使すると、もしも債権者が主たる債務者へ催告していれば返済してもらえた金銭があったのに、しなかったがために弁済を得られなかった場合、返済してもらえたであろう金銭額を限度として保証人は返済義務を免れることができます。
例えば、AさんがB金融に100万円を借り、あなたが保証人になっていたとしても、B金融があなたのところに「100万円返せ!」と来ても「Aさんに請求してください。」と言い返すことができます。このあと、B金融がAさんに請求していれば30万円を返済してもらえたのに請求しなかったなら、あなたは残りの70万円だけを保証すればいいことになります。

権利②「検索の抗弁権」

「検索の抗弁権」とは、主たる債務者に財産があり、その財産の取り立てが容易であることを証明できた場合に、債権者に対して「主たる債務者(お金を借りた人)には財産があるから、先にそっちから請求してください。」と返済を拒否できる権利です。
この権利を行使されると債権者は主たる債務者の財産の取り立てから執行しなければならず、それを怠った場合、保証人は「催告の抗弁権」と同様に、返済してもらえたであろう金銭額を限度として保証人は返済義務を免れることができます。
例えば、AさんがB金融に100万円を借り、あなたが保証人になっていたとしても、B金融があなたのところに「Aさんはお金が無いから、代わりにあなたが100万円返せ!」と来たとします。しかし、Aさんは70万円で売却できる自動車を所有しています。このとき、あなたは「Aさんは70万円の車に乗っているから、先にそっちから取り立ててください。」と返済を拒むことができます。このあと、B金融が自動車の差し押さえや、売却を要求しなかったとしたら、あなたは残りの30万円だけを保証すればいいことになります。

権利③「分別の利益」

「分別の利益」とは、保証人が複数人いる場合は、主債務の金額を保証人の人数で平等に頭割りした金額分だけ責任を負えばよいということです。
つまり300万円の主債務に対して3人の保証人がいる場合は、1人の保証人は100万円だけ責任を負うことになります。

現実的には保証人といえば「連帯保証人」となります。
では「連帯保証人」となるとどうなるか。
連帯保証人には「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」「分別の利益」が与えられておらず、債権者から弁済を要求されると、拒否することができません。
また主たる債務者の財産を調査したり、異議申し立てをしたりすることもできず、時効で消滅することもない。
さらに連帯保証人が死亡したときは相続人が引き継がなければならない。
「保証人」に比べて「連帯保証人」の方が重い責任を負い、債権者にとっては都合がいいため、現実には「連帯保証人」にすることが多く、保証人といえば「連帯保証人」のことを指していることがほとんどです。

賃貸借契約に必要な連帯保証人

連帯保証人には誰でもなれる訳ではなく、当然に家賃支払いを肩代わりできる保証能力と「収入証明」「印鑑証明」「保証人承諾書への実印押印」といった書類が必要になります。
一般的には親族になってもらうことが多いでしょうが、他人にお願いしなければならないケースもあります。
具体的に連帯保証人になれるのは「安定した収入がある3親等以内の親族」の条件を満たす人です。
安定した収入とは、入居審査の基準となる「家賃の36倍以上の収入(年収)」のことを指します。
たとえば10万円の物件に入居する際には、360万円以上の収入(年収)を得ている必要があります。
3等親以内の親族とは、両親や子ども、祖父母、兄弟姉妹、孫、総祖父母、叔父、叔母、甥、姪、ひ孫のことを指します。
連帯保証人は重大な責任と義務を負うめ、なってくれる人が見つからず賃貸借契約を結べないといったこともあるかも知れません。
そんなときは不動産業者に相談し家賃保証会社を利用する方法もあります。
万が一、家賃の支払いができなくなったときなどに、代わって支払いをしてもらえるサービスです。
留意点として、連帯保証人が支払った場合は入居者の債務は消滅しますが、保証会社は支払い家賃を立て替えるだけで、入居者の債務が無くなる訳ではなく、債権者が家主さんから保証会社に代わるだけです。

連帯保証人に用意してもらう書類

連帯保証人に用意してもらう書類

連帯保証人は借主と同様の責任を負うため、下記の情報が必要となります。

・名前
・生年月日、年齢
・住所
・電話番号
・入居希望者との続柄
・職業、会社の詳細情報、勤続年数
・収入、年収

これらを下記の証明書を用いて不動産会社や大家さんが審査を行います。
それぞれ、勤務先の会社や税務署、市区町村の窓口などで取得することができます。

・運転免許証や保険証、パスポートなどの身分証明書
・源泉徴収票や給与明細などの収入証明書
・実印や銀行印などの印鑑
・印鑑証明書

借主が自己破産した場合

借主の返済能力が無くなり、自己破産をした場合はどうなるのでしょうか?
結論として、借主は返済義務がなくなりますが、保証人・連帯卯保証人ともに借金を返済しなければなりません。
このように、保証人、連帯保証人は責任が重い役割であるため、たとえ親族でも引き受けるかどうかは慎重に考えなければなりません。
また、親族に保証人、連帯保証人になってもらう場合は上記を承知で引き受けてもらうため、滞りなく支払いを行って迷惑をかけないようにしましょう。

保証人や連帯保証人に関する法律

保証人や連帯保証人に関する法律

先述のように、保証人や連帯保証人は大きなリスクを背負う立場にあるため、なかなか引き受けてくれないことがあります。
そのような状況を変えるため、2020年4月に保証に関する民法のルールが改正されました。
下記、法改正により設けられた新しいルールです。

上限額がない保証契約は無効となる

保証契約の中には、上限額が設けられていないものもあります。
もしも借主が破産した場合、多額の借金を返済しなければならないため、大きなリスクであると言えます。
今回の改正により、上限額を明確に定めていない保証契約は無効となります。

特別な事情による保証の終了

これまでの法律では、借主が破産をした場合でも保証人や連帯保証人は支払い義務を棄却することができませんでした。
しかし今回の法改正により、保証人が破産した場合や借主が亡くなったときは、その後に発生する返済義務がなくなります。

法改正により借主や保証人、連帯保証人の負担は軽減されたと言えます。
しかし、賃貸物件の貸主である不動産会社や大家さんは家賃回収に関するリスクが上がったと言えるため、会社によっては審査が厳しくなることが考えられます。

保証人や連帯保証人を立てられない場合

賃貸借契約を締結する際に、何らかの理由で保証人や連帯保証人を立てられない場合は、家賃保証会社を利用します。
家賃保証会社とは借主が家賃を支払えなかった場合に立て替えてくれるサービスを提供している会社です。
当然、立て替えてもらった家賃は保証会社に返済しなければなりません。

おわりに

本記事では保証人と連帯保証人についてご説明しました。
保証人・連帯保証人ともに借主が家賃を支払えない場合、代わりに支払わなければなりません。
責任の重さについては連帯保証人の方が大きく、借主と同等の責任を負います。
2020年4月に法改正があったため、以前よりも負担は減ったものの、借主の性格や態度などを判断したうえで引き受けるかどうかを検討しましょう。

出典:法務省ホームページ(https://www.moj.go.jp/content/001254262.pdf)

著者情報

賃貸住宅サービス

賃貸住宅サービス住まいのお役立ち情報編集部 株式会社グラート

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