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堺市の空き家、その活用

平成25年、総務省が行った住宅・土地統計調査で日本全国では820万戸の空き家がありました。総戸数は約6,060万戸あり、空室率は13.5%という状況です。10年前で12.2%、20年前で9.8%でしたので徐々に空室率が増加しています。核家族化が進み人口減少しているわりに世帯数は増加しているのですが、それを上回るペースで住宅が増えているのが現状です。
堺市でも空家数が53,800戸、空き家率13.2%となっています。10年前の調査では13.6%だったので空家率は微減し、若干全国平均を下回りました。今後も全国では空き家率上昇、堺市では横ばいから微減の傾向が続くことが予想されます。
堺市でも全国でも、世帯数は増加しているのにそれを上回るペースで住戸が増えているため空室率が増加・横ばい傾向にあります。なぜ空室になるリスクが高まっても着工があまり減らないのでしょうか。
これには複数の要因がありますが、主要因を並べると ①相続税対策としての住宅の有効性 ②住宅ローン金利低下による不動産投資の活性化 ③J-REITの活性化 でしょう。
①相続税対策としての住宅の有効性
相続が発生した場合、現金は税率が高く多くの相続税を納めなくてはなりません。そこで被相続人(財産を残して死んだ人)になる予定の人は現金を不動産に変える傾向があります。不動産になるだけで相続税の計算の元となる評価額が下がり、さらに住戸を建てる際に借金をすればその借金分も差し引かれます。このため相続税対策として不動産を取得するケースがあり、空室率が高く赤字になっても建築する人がいるのです。
②住宅ローン金利低下による不動産投資の活発化
黒田日銀総裁が2013年から行っている金融緩和によって超長期固定金利は約0.7%程度低下しています。金利が0.7%違うと1千万あたり返済が1年で4万円程度変わります。例えば1億円借りて不動産を建てた場合年間40万円変わるんですから金利の低下は不動産への投資を活性化させます。
③J-REITの活性化
J-REITとは不動産へ投資する投資会社、またはそのサービスのことを言います。先ほどの金利低下も影響していますが、少額から不動産のオーナーになれる仕組みになるので、J-REITを活用することで不動産投資の敷居が低くなります。これにより資金力が比較的低い人も不動産に資金を回すようになりました。
この状況は2017年も大きく変化はない見込みです。(金利については日銀が日本国債の買い取りが難しい状況になる可能性もあり、上昇のリスクはあります)
しかし空き家の増加は堺だけではなく日本全国の経済にとってマイナスの影響があります。例えば分譲マンションで空き家が増えると、住人全体で集める修繕費が必要額に集まらず全体の修繕が出来ないといった問題が起こり得ます。また空き家の増加で人口密度が低下した場合、その地域での商業やインフラ等も売り上げが上がらず維持が難しくなっていきます。こういったことが増えていくと街全体の活力が失われていくことが予想されます。
この対策として堺市では空き家バンクを運営し、賃貸住宅サービス堺東店もそれに協力しています。空き家バンクとは現在空き家となっている物件の情報を集め、それを必要としている人向けに提供していくというサービスです。低所得者向けの住宅セーフティーネットとして、空き家を活用して家賃補助や住宅改修費用などを国等が支援する仕組みで、2017年度予算に約27億円が盛り込まれます。
堺市も現在横ばい状態の人口数は今後減少に転じる見込みとなっており、ただ手をこまねいていたのでは街全体に空き家が増え景観や治安の悪化、活力低下が予想されます。
これを防ぎ堺を盛り上げていくため、賃貸住宅サービスでも積極的に空き家を活用していく方針です。